覆面の北枕

実家に帰ったら母方の婆さんも泊まりに来ていた。御年百歳、化け物である。

生意気な俺ですら婆さんの前にはひれ伏すしか為す術がない。

良くも悪くももうろくしてないから面倒なんだよなぁ（笑）、会えば必ず新しい嫁はまだかとせがむ。こちとら嫁はおろか彼女すらいないのだが…。

先日、起業するんだという青年からホームページ制作の依頼を受けた。詳しい年齢は知らぬが大学を出たてというから恐らく二十代前半、極端なことを言えば俺と親子ほど年齢が離れている。

彼を見て思ったのは若いことが心底羨ましいと思った。あの頃は金などなくても若さだけで突っ走れた。怖いものなどなにもなかった。ヤクザの事務所だろうがナイフ持参で単身乗り込んだ。今なら絶対に嫌だ（笑）。

いくら野心に燃え、野望こそが我が心の拠り所であるとはいえ、さすがに年齢を感じる。白髪が増え、体力も著しく落ちた。かつて、腕相撲に自信はあったが今では情けないくらい負けてばかりいる。

野心の火が消えぬ前になんとか我が野望を成就させたいと願うがそれまで果たして体力が持つかどうか。

四十の俺がわりとネガティブにそう思っているのに百歳の婆さんがかくしゃくとしているのだから恐れ入る。そりゃあひれ伏すだろう（笑）。

比較するのはおこがましい話だがイチローと自分は同い年、彼の劣化はひとごとではない。

スーパースターですらあれだ、凡人の俺なら推して知るべし。

だからといってケセラセラでなすがままに生きようなどとは思わない。

踏張るしかない。

なんとか基盤を作り、誰か次の世代にバトンを渡したいのだ。


甥以外の誰かに。