覆面の北枕

大分娘失踪の自演事件なぁ、あれ、容疑者はもちろんシャレにならんが、背景には深い闇があるみたいだな。

何でも新興住宅地に引っ越してきたはいいが、旦那は仕事で不在がち、犠牲になった女の子は生れ付き足が不自由な障害者、別に母親を擁護するつもりはないが心の内面に色んなものを抱えていたのだと思う。

ただ、俺が気の毒でならんのは捕まった母親ではなく、まだ幼い長男の存在だ。

もしこの事件が死体遺棄だけでなく、殺人事件であれば少なくとも十年はお勤めに行かなくてはならんわけで、子供にとって一番多感で大事な時期を母がいない状況で過ごさなくてはならない。

それが不憫でさ。

長男がいくつか分からないが恐らく４、５才だろう、甘えたい盛りじゃん。

これが死別であれば苦しくとも受け入れなくてはならないが刑務所では。

私事だが離婚した時、親権を争わなかった理由はここにある。

弁護士に相談したところ、諸々を加味して、うまくいけば親権を取れるだろうと言われた。

だが、仮に裁判で勝って親権を得られたところで俺に母親の代わりは出来ない、、だから俺は泣く泣く諦めた。

俺の勝手な都合で母親の愛情を知らずに育てるのはあまりに不憫で可哀想だと考えた。

俺は娘に迷惑を掛けた分、一生娘とは会うまいと誓ったよ。

でもそうはいっても毎日浮かぶのは娘のことばかりなんだけどさ。

ふと気が付くと、今頃なにしてんだろう、楽しくやってるかな、イタズラをしてママに叱られたりはしてないかなと、そんなことばかり考えている。

こればっかりは時が経っても解決しなそうだけどね。