覆面の北枕

自分の性格は先日のカミングアウトの話じゃないが物凄く消極的である。

とにかく人と接するのが苦手である。

気の置けない仲間といるのは凄く楽しいが社交的な集いは嫌いだ。何度か名刺交換会的なパーティーに出席したことがあるがひどくつまらなく感じてしまい、いつも早く終わることばっかりを考えていた。

一見すると人当たりがよく（自称）、誰とでも別け隔てなく話せるように思われているから俄かには信じて貰えないが本当は独りで海でも見ながらのんびりと絵を描いているほうが好きなのだ。

ただ、幸か不幸か、それなりに必要とされてはいるらしく、現実はなかなか独りにさせてくれない。

自ら営業活動をしていてこんなことを言うのもどうかと思うがなんで俺みたいな人間を必要としてくれるのか正直自分でも分からない。

学もなけりゃ、才能もないマイナスばっかりの人間である。

有り難い反面、いつも思うのは本当に俺なんかでいいのかってことだ。

実を言うと今月から自分はあるプロジェクトに関わっている。それだって、携わらせてくれたことに感謝する反面、俺でいいのかと何度も反芻した。

詳しくは言えないがあるハリウッドスターをイメージキャラクターにしたアパレル商品のネット販売だ。

あくまでもプロジェクトであるから自分の独断は許されない。

しかし、ある一定の存在感を示しておかなければ不必要と判断され、干されてしまい、来年の契約はなくなる。

ただ、難しいのは順調に行きすぎると俺のギャラがあまりに膨大になりすぎて今度はそれが足枷になり、契約を更新されない恐れがある。高額年俸が問題になるプロスポーツ選手みたいなものだ。

だから、俺は至る所に自分にしか操ることの出来ない地雷を仕掛けている。

その地雷、普段は集客の大きな武器として生きるが時として自爆装置にもなる。

いわゆる諸刃の剣だ。

もし契約の更新がされないときはその地雷をすべて爆破する。スイッチの入れ方や解除の方法は誰にも教えない。

バカなくせにそういうところは抜け目なくあざとい。

時にそのあざとさに嫌気がさす。

積極的に和気あいあいとやれるような人間ならそんな真似はしない。

消極的な人間だからいつも予防線だけは張っている。

なんだかな。



≫ゆいちゃん

お褒め頂きありがとうございます（笑）。話が面白いかどうかは分かりませんがとりあえず、いかにも裏稼業に生きているような粗暴な振る舞いはしなかったと思います。ただ、人間って分からんもんだね、ゆいちゃんとはまさかここで会話をするようになると思ってませんでしたから。


≫王子くん

まあやめる、やめないは本人の考えなんで僕がどうこうは言えないよねぇ。

色々考えた末の結果なんでしょうから。そもそも自分と彼女との接点は夢幻が摘発された時点ですべて終了してますので今更自分がなにか言える立場ではありません。