覆面の北枕

知り合いに少しばかり金貸してたんだよ、毎月１万ずつ返済するっていう約束でさ。

そしたら、そいつ死にやがった。

ダボがっ。

なんで死んだかは家族も口を濁して言わないため、詳細は分からんのだが恐らく状況から見て自殺なんだろうと思う。

前から言っている通り、人には生きる権利もあれば死ぬ自由もあるから自殺で死のうが老衰で死のうが何とも思わない。

奴が死んだところで悲しみの感情が湧くなんてことは微塵もない。

ただ、あるのは金をきちんと返してから死にやがれってことだけ（あ、きちんと返したら死ぬ必要ねぇか、笑）。

なんでもさ、親父さんに聞いたらヤバい筋からも相当引っ張ってたらしく、「もうわたしらじゃ清算出来ないので裁判所に行って相続を放棄してきました…」だそうだ。

さすがの俺もそれ以上は追えんからね、借用書はただの紙切れ。

それにしてもあいつホントどうしようもねぇ奴だったな。

脳みそ空っぽのカラバカのくせして夢みたいなことばっかり言っててさ、それでとどのつまりは嘘付きまくり、あっちからもこっちからも金借りまくった挙げ句、自殺（たぶん）。

聞いたらヤクザもんはおろか取引先の営業マンにまで金借りてたらしいじゃん。

呆れたね。

俺だって今カツカツの状況で踏張っててさ、金なんか貸せる余裕なんてないのにどうしても貸してください、お願いします、つぅから善意で貸してやったら自殺だもん、ホント頭くんぜ。

結局得したのは金借りまくって自殺したそのバカじゃねぇか。

まったくやってられんよ。