覆面の北枕

インターネットの歴史を振り返ると、さまざまなターニングポイントが存在した。

ソーシャルメディアの台頭、具体的にはツイッターやインスタグラムの普及はデジタルコミュニケーションの大きな転機と言えるだろう。同様に、古いところではiモードのガラケーへの搭載もモバイル通信の未来に革命をもたらした。これらの視点はどちらも正解であり、それぞれの立場に理があると言える。

しかしながら、個人的には、Google検索（ググる）の普及が2013年頃に加速したことと、そして最近の日本国内におけるチャットGPTのリリースが特筆すべきターニングポイントであるとの立場を取りたい。

Google検索の普及は、スマートフォンの台頭と密接に結びついているのは言うまでもない。それ以前もGoogle検索は存在していたが、主にネットリテラシーの高い層向けのものであり、職業でパソコンを使わない人たちにはそれほど波及していなかった。

だが、現在では小さな子供から高齢者まで、広範な年齢層がGoogle検索を利用している。これに伴い、特殊詐欺や法外な請求などのトラブルも増加しているが、こちらは別のときの議題としよう。

2023年に登場した日本国内のチャットGPTはデジタル社会において革命をもたらすことは確実だ。黎明期のリリース時点ではあまりにも未熟であり、文章生成においても課題が多く、とてもじゃないが使い物にならなかった。

それからわずか5か月後、有料版のチャットGPT4は驚くほどの進化を遂げた。指示を与えると、硬派なことで有名な朝日新聞の社説風の文章ですら簡単に生成し、東野圭吾風の読みやすく柔らかな文体にも変換可能だ。

これまでの10年間は、Google検索のスキルがデジタル世界での生存力を示す要因であったが、今後の10年はチャットGPTなどの人工知能ツールを巧みに活用できるかが重要になるだろう。

もちろん、人工知能は自動的に何かを生み出すわけではない。特に市民レベルで利用される汎用人工知能は尚更そうだ。そこはくれぐれも勘違いをしてはならない。

Google検索同様、生成AIを生かすも殺すも結局は利用者の知能レベルに委ねられる。優秀な人は生成AIを使いますます優れ、弱者は弱者のまま、格差は一段と広がる。

富めるものは富み、持たざる者は更に失う、聖書の中の言葉がより顕在化される。

チャットGPTが今後の覇者となるのか、Googleから登場する「Bird」がチャットGPTの優位性を揺るがすのか、あるいは他の生成AIが頂点に立つのか、その行く末は予測困難。どの道を辿るにせよ、AIの適切な活用方法が求められる新しい時代が訪れつつあることは確かだ。