タッチ
- 2023/08/20
- 17:23
金曜日の晩だというのに酔客は俺一人。山椒の居酒屋だ。店主がいるのは俺の隣、ひとしきり酒と料理を出し終えるとカウンターに並んで座る。完全にやる気がない。そもそもここに座りなよと呼んでもいない。
「昨日、タッチの夢を見た」
店主はおもむろに語りだす。
「野球漫画の?あだち充?」
「そうじゃねぇよ。タッチは佐和・勝田の酒飲みなら知らない人がいないくらい有名な飲み師だ」
前々から思っていたが、医師や調理師、美容師は分かるが、飲み師ってなんだよ?単なるアル中じゃねぇかと思ったが、キレられても面倒なので適当に相槌を打つ。だいたい知らない人がいないくらい有名だと言うわりに、今、目の前にいる俺は事実タッチを知らない。
「タッチなんていったらやくざもんでも一目を置く、イイ飲み師でなあ、やくざもんだって飲み屋でタッチを見ると向こうから来て、おはようございます、お疲れ様ですだから、それぐらいイイ飲み師」
ヤクザに一目を置かれる。好意的に捉えていいものか、否定的に捉えていいものか分からず、答えに窮するが、とりあえずは聞き流す。
「タッチは給料もらったら全部酒に遣っちまう。月に30(万円)じゃきかなく飲み屋に遣っただろう、それぐらい飲み屋には貢献したよう~」
単なるダメおやじじゃねぇかと思ったが、これもまた黙っていた。
「タッチは歌も好きでなあ、また、それが上手いんだ、鳥羽一郎を歌わせたら天下一品」
まあ歌が上手い呑兵衛などいくらでもいる。
「それでそのタッチは今どうしてんの?」
「酒飲み過ぎてすい臓悪くして最後は血吐いて死んだ」
「……………………」
俺も一曲歌いたくなった。イエローモンキーのJAMが歌いたい。熱唱がしたい。この店にカラオケがないのが残念だ。
『僕は何を思えばいいんだろう
僕は何て言えばいいんだろう
こんな夜は 逢いたくて 逢いたくて 逢いたくて
君に逢いたくて 君に逢いたくて
また明日を待ってる~』
帰ります。不覚にも目から汗が落ちそうだ。
「昨日、タッチの夢を見た」
店主はおもむろに語りだす。
「野球漫画の?あだち充?」
「そうじゃねぇよ。タッチは佐和・勝田の酒飲みなら知らない人がいないくらい有名な飲み師だ」
前々から思っていたが、医師や調理師、美容師は分かるが、飲み師ってなんだよ?単なるアル中じゃねぇかと思ったが、キレられても面倒なので適当に相槌を打つ。だいたい知らない人がいないくらい有名だと言うわりに、今、目の前にいる俺は事実タッチを知らない。
「タッチなんていったらやくざもんでも一目を置く、イイ飲み師でなあ、やくざもんだって飲み屋でタッチを見ると向こうから来て、おはようございます、お疲れ様ですだから、それぐらいイイ飲み師」
ヤクザに一目を置かれる。好意的に捉えていいものか、否定的に捉えていいものか分からず、答えに窮するが、とりあえずは聞き流す。
「タッチは給料もらったら全部酒に遣っちまう。月に30(万円)じゃきかなく飲み屋に遣っただろう、それぐらい飲み屋には貢献したよう~」
単なるダメおやじじゃねぇかと思ったが、これもまた黙っていた。
「タッチは歌も好きでなあ、また、それが上手いんだ、鳥羽一郎を歌わせたら天下一品」
まあ歌が上手い呑兵衛などいくらでもいる。
「それでそのタッチは今どうしてんの?」
「酒飲み過ぎてすい臓悪くして最後は血吐いて死んだ」
「……………………」
俺も一曲歌いたくなった。イエローモンキーのJAMが歌いたい。熱唱がしたい。この店にカラオケがないのが残念だ。
『僕は何を思えばいいんだろう
僕は何て言えばいいんだろう
こんな夜は 逢いたくて 逢いたくて 逢いたくて
君に逢いたくて 君に逢いたくて
また明日を待ってる~』
帰ります。不覚にも目から汗が落ちそうだ。