覆面の北枕

札幌の猟奇殺人事件、解明には長い時間が掛かりそうだ。

娘が生粋のキチガイなのは分かる。あれをキチガイと言わずとしていったい誰をキチガイと言わんや。

問題は親、特に父親。

娘に殺害の決行を告げられる。普通は止めるもんだろう。バカなことはよせと諫めるのが親の役割。

しかも、自身はまかりなりにも命を守るべき立場の医師だ。

報道の通りであれば一緒になって刃物を購入するためホームセンターに向かったとある。止めもせず、一緒に刃物を選び、決行当日も現場となったホテルまで送り迎え。直接の実行犯ではないが、長期刑は免れまい。刑事事件に詳しい弁護士の見立てでは父親が主導であれば父親の求刑は23年前後、仮に隷属的な立場でも10年前後の求刑。

一般的に実際の判決は求刑の3割引きが相場であるから15年から7年ぐらいの実刑判決だ。

報道によると娘は生首と一緒に記念撮影をしたというではないか。勝利の美酒のつもりか。お前は浅井長政の頭蓋骨で作った盃で祝杯をあげた織田信長か。

当初、被害者男性が娘を無理やり犯し、その復讐として殺害したと報じられていた。

娘の祖父なる人物が、「孫は大の男嫌いにも関わらず、被害者に騙されホテルに連れ込まれて性行為を強要された」と語っていた。

首を落とすのはさすがにどうかと思うものの、もし仮に祖父の言質が事実であるのであれば一定程度、殺害に至るまでの経緯も理解出来る。惚れた男ならまだしも、女装マニアの変態に操を奪われたのであれば自らの沽券にも関わる、ケジメをつける意味でもその命以て償ってもらう、完全に悪党の論理であるが一応筋は通っている。

しかし捜査が進めば進むほど不自然さが浮かび上がる。

この娘はそもそも生首に強い思い入れがあったのではないかと思う。刺し殺すことはあっても殺害後、ノコギリを引いて首を落とす、なかなか出来ることではあるまい。胴体だけを残して逃げる理由もよく分からない。ルミノール反応（血液の反応）を消すための処理も施していない。父親は曲がりなりにも医師、いくらオペとは無縁の精神科医であってもルミノール反応ぐらいは分かりそうなものだが。

黙秘をしているが、父親のまったく無関係は通じない。ノコギリを買ったホームセンター内での防犯カメラ映像も証拠として提供されているであろう。ホテルに送り迎えをする車もバッチリ記録として町の防犯カメラに残されている。長期刑を科せられ、出所後もいばらの道を歩む、分かり切っているはずだ。娘可愛さのあまり、犯行に協力したのだろうが、あまりにも短絡的、あまりにもずさんだ。ともすれば逃げ切れるとでも思ったのか。

一つ、確実にいえるのが娘は生まれる時代を間違えてしまったこと。

江戸時代以前であれば介錯人として名を馳せられたものの……。

出所後にまだISIL(イスラム国)が残っていればいいが。