覆面の北枕

小便をして竿をよく振り、しずくがもう落ちないのを目視確認、これで大丈夫だとパンツをあげる。そしてじゅわ～、尿漏れだ。全然大丈夫じゃない……。

最近は情けないが尿漏れをしてしまうことが少なくない。尿漏れは老化現象の一つでもあるため致し方ないと諦めてもいるが、如何せん、パンツどころかズボンにまで染み出てくるほどの尿漏れは何といっても気持ちが悪い。自分では気づかないがもしかすると人知れず不快なアンモニア臭を発しているかもしれない。

先日、思い切って尿漏れ安心パンツなるものをしまむらで買ってみた。これが殊の外いい。前面に尿吸収用のパッドが入っており、尿漏れでパンツはおろか、ズボンを濡らすのを防いでくれる。自分のためでもあるし、相手のためでもある。老眼鏡のパンツ版だと思えば尿漏れ安心パンツも案外悪くない。なかなか気を遣う世の中だ。

気を遣うといえば、最近は人と話しても恋愛や家族の事情を聞かないようにしている。

妙齢のお嬢さんに、「ご結婚の予定は？彼氏はいるの？」などと聞こうものなら相手によっては痛い目を見る。セクハラの意図はない、単なる話の取っ掛かりになればと軽い気持ちで聞いただけなのにその軽い気持ちを曲解されてセクハラだ、モラハラだと騒がれたらたまったものではない。そんな意図はさらさらない。こちとら若い小娘になど興味はない。いやいや小娘などと言おうものならそれこそが問題発言だ。

近頃の教師はお父さん、お母さんとあまり言ってはいけないらしく、保護者と呼ばなくてはならないらしい。こちらも気を遣っての話。

世の中には様々な家族形態があり、サザエさん一家やちびまる子ちゃん一家のようなごくありふれた家庭ばかりを児童・生徒の家族像として捉えるのは今の時代、無理があるという。

生物学上の父母の存在はあっても必ずしもその父母は心の父母とは限らず事情は複雑だ。お母さんが再婚相手として女性を選び事実婚、お母さんが二人といった家庭もあるにはあるだろう。また、父母がネグレストで、祖父母や伯父伯母に養育されているケースもある。そもそもシングルの家庭も多い。再婚相手の継母（継父）からあの子は私の子供じゃない、たまたま一緒に住んでいるだけと言われたら返す言葉がない。

対して保護者はどういった家族形態にも即して遣える魔法の言葉であるから教師は父兄を保護者と呼ぶようにと教育委員会からも指導されているとのことだ。

世知辛い世の中だと思う反面、現場の教員が直接矢面に立つのを考えればそれも致し方ないと思う。

分かっちゃいるがどうもスッキリしない。

この釈然としないスッキリのしなさはまるで尿漏れを起こした後のようだ。また初めから読み直せ。無限ループでござる。