お客様は人間です
- 2023/06/09
- 13:58
今も昔もお客様を神様だとは思っていない。
お客がいるからこそ飯が食えているのは事実だが、だからといってくれぐれも神様だとは思っていない。
「山椒」の居酒屋に行くとマスターが多少キレ気味で憮然としていた。いったいどうしたと尋ねると、先日飲みに来た元市議の男が酔っぱらって、「こんな場末の居酒屋で……」とくだを巻いていきやがったと憤る。
「失礼だよな。店主がへりくだって自分の店を場末と言うのなら分かるが客が言う言葉か。百歩譲って店の外で店の人間の分からぬところでいうのであればまだいい。店の人間がいる前でいくら酔っぱらっているからって言っていい言葉か、なあマスター」
「まったくだ」
「ヤクザがよう、自分のことをへりくだってヤクザといっても、堅気の人間がヤクザもんに向かってヤクザなんていったらいけねぇよな。それと同じ。ヤクザにはヤクザといわず、博徒なら任侠、テキヤなら神農、或いはまとめて稼業人というのが正解だろ、ヤクザにヤクザって直接言っていいのは丸暴のデカだけだ」
「まったくだ」
「だいたい、場末、場末いうのならわざわざそういう店に来なきゃいいだろうが、なあマスター」
「まったくだ」
違法フーゾク時代、「おう、今からオンナ回せや」、こんな電話が掛かってくると俺は「てめえにつける女の子はいねぇ、失礼な口を利くな」といって滅茶苦茶キレた。女衒だろうが、WEB屋だろうが、今も根っこは同じ、商談や電話で失礼な言い方をされると、その言い方って失礼じゃないかといってキレる。こっちは客だろうなどと言われようものなら、「なにが客だ、コノヤロウ、客っていうのは金を払っている人を客っていうんだ、てめえから1円の金でも貰ったんか、コラッ」と怒鳴りまわす。失礼な口の利き方をされてもヘラヘラして頭を下げれば金をもらえる、1万円札に綺麗も汚いもない、1万円札はどこまでいっても1万円札、綺麗な金でも汚い金でも買える商品は同じ、確かに道理だが、それは違うんじゃないかと思っている。格好つけるのであれば商品の前に俺は男を売っている。
もちろん、高級キャバクラのように客が王様となり、横柄な態度でキャストやボーイに失礼な言動を吐くのもサービスの一つであれば多少のことには目をつぶる必要もあろうが、俺の商売哲学には残念ながら客側の不遜な態度は料金として含まれていないため、怒鳴りまわしても構わないと決めている。
金を払っているから失礼なことをいっても構わない、金を払っているのだから食い散らかしたって構わない、金を多く払っている人が少ししか払っていない人よりもエライ、だから金を多く払っている人は少ししか払っていない人をバカにしても構わない、もしかすると商売人としては失格かもしれないが俺はこういう考えを到底承服できない。
その代わり俺も料金の支払いをするとき、ほらよと投げ渡したりはしないし、年下だろうが失礼な態度を取られない限り、ひとりの人間として店員さんに敬意をもって接しているつもりだ。別に偉ぶるつもりもへりくだるつもりもなく、互いに礼節をもって接するのが健全な商売だと考える。
土下座して靴を舐めれば百万円やる、くれぐれもこんなことを言われても絶対に靴を舐めてもいけないし、舐めさせるようなことも言っちゃいけない。
お客がいるからこそ飯が食えているのは事実だが、だからといってくれぐれも神様だとは思っていない。
「山椒」の居酒屋に行くとマスターが多少キレ気味で憮然としていた。いったいどうしたと尋ねると、先日飲みに来た元市議の男が酔っぱらって、「こんな場末の居酒屋で……」とくだを巻いていきやがったと憤る。
「失礼だよな。店主がへりくだって自分の店を場末と言うのなら分かるが客が言う言葉か。百歩譲って店の外で店の人間の分からぬところでいうのであればまだいい。店の人間がいる前でいくら酔っぱらっているからって言っていい言葉か、なあマスター」
「まったくだ」
「ヤクザがよう、自分のことをへりくだってヤクザといっても、堅気の人間がヤクザもんに向かってヤクザなんていったらいけねぇよな。それと同じ。ヤクザにはヤクザといわず、博徒なら任侠、テキヤなら神農、或いはまとめて稼業人というのが正解だろ、ヤクザにヤクザって直接言っていいのは丸暴のデカだけだ」
「まったくだ」
「だいたい、場末、場末いうのならわざわざそういう店に来なきゃいいだろうが、なあマスター」
「まったくだ」
違法フーゾク時代、「おう、今からオンナ回せや」、こんな電話が掛かってくると俺は「てめえにつける女の子はいねぇ、失礼な口を利くな」といって滅茶苦茶キレた。女衒だろうが、WEB屋だろうが、今も根っこは同じ、商談や電話で失礼な言い方をされると、その言い方って失礼じゃないかといってキレる。こっちは客だろうなどと言われようものなら、「なにが客だ、コノヤロウ、客っていうのは金を払っている人を客っていうんだ、てめえから1円の金でも貰ったんか、コラッ」と怒鳴りまわす。失礼な口の利き方をされてもヘラヘラして頭を下げれば金をもらえる、1万円札に綺麗も汚いもない、1万円札はどこまでいっても1万円札、綺麗な金でも汚い金でも買える商品は同じ、確かに道理だが、それは違うんじゃないかと思っている。格好つけるのであれば商品の前に俺は男を売っている。
もちろん、高級キャバクラのように客が王様となり、横柄な態度でキャストやボーイに失礼な言動を吐くのもサービスの一つであれば多少のことには目をつぶる必要もあろうが、俺の商売哲学には残念ながら客側の不遜な態度は料金として含まれていないため、怒鳴りまわしても構わないと決めている。
金を払っているから失礼なことをいっても構わない、金を払っているのだから食い散らかしたって構わない、金を多く払っている人が少ししか払っていない人よりもエライ、だから金を多く払っている人は少ししか払っていない人をバカにしても構わない、もしかすると商売人としては失格かもしれないが俺はこういう考えを到底承服できない。
その代わり俺も料金の支払いをするとき、ほらよと投げ渡したりはしないし、年下だろうが失礼な態度を取られない限り、ひとりの人間として店員さんに敬意をもって接しているつもりだ。別に偉ぶるつもりもへりくだるつもりもなく、互いに礼節をもって接するのが健全な商売だと考える。
土下座して靴を舐めれば百万円やる、くれぐれもこんなことを言われても絶対に靴を舐めてもいけないし、舐めさせるようなことも言っちゃいけない。