課題を出す。
今、目の前に、天然ホンマグロの大トロ、霜降りA5ランクの和牛サーロインステーキ、そしてコシヒカリの一等米を炊いたホカホカご飯がある。
現在19時、あなたは忙しくて昼飯を食べそびれてしまった。これから、大トロ、ステーキ、白米、好きなものを好きなだけ食べてください。但し、大トロと白米、ステーキと白米、大トロとステーキ、二種類以上は食べられません、食べられるのはあくまでもどれか一つ。大トロにはわさび醤油、ステーキにはステーキソース、塩コショウ、これらの調味料は自由に使ってくれて結構ですが、白米はあくまでも白米のまま食べてもらいます。言うまでもなく、すべて最高級ランクのものですので食材になにか細工がしてあることは決してありません。
さあ、どうぞ。
まあ殆どの人が大トロかステーキを選ぶであろう。
続けて、もう一つ課題を出す。
大トロ、ステーキ、白米、どれも条件は同じであるが、前回とは打って変わり、今回選んだものが今後永久に食べられなくなります、大トロを選んだら、明日から大トロが、ステーキを選んだら明日からステーキが、そして白米を選んだら明日から白米が、金輪際口にすることが出来ません。そこをよく踏まえたうえで食べたいものを選んでください。
こういう課題であると、恐らく殆ど人が白米を選ぶと思う。
つまり、なにが言いたいのかというと、俺にとって茨城県とはこの場合でいう白米であると思うのだ。確かに東京や北海道、沖縄のような大トロ感やステーキ感はないかもしれない、だが、白米同様、なくては困るのである。
昨日、またぞろ、都道府県魅力度ランキングが発表された。統計手法が極めて不透明なこの魅力度ランキングにイチイチ反応するのもバカバカしいが、あえて乗っかるのであればそもそもの比較がおかしいのである。
大トロと白米を出されてどちらが欲しいですかと聞かれれば誰だってとまでは言わないが、それでも多くの人が大トロというに決まっている。じゃあ、大トロを差し上げます、その代わり、白米は一生食べられないと言われたら話は別だ。
すべてを一緒くたにして、お前の県は魅力がなさ過ぎるといわれたところで、生活するうえでなにも困っていませんがと言われると返答に窮するのではないか。事実、茨城県はスキー場とプロ野球の球団がないぐらいであとはだいたいなんでもある。言うまでもなく海もある。スキー場がなくても、特に困りはしない。お隣、栃木や福島にはスキー場があるため、車で3時間も走れば白銀の世界だ。むしろ負け惜しみをいうのであれば雪下ろしの作業に日夜疲弊するぐらいなら、スキーをしたいときだけ、3時間掛けてスキー場に行った方がよっぽど精神的にも肉体的にも楽である。
都会の洗練された雰囲気もそう。
どこに行ってものっぺりとした街並みが続き、茨城県内には都会的なものがまるでない。つくばだって空洞化が進み、駅前の西武撤退後は正直、かつてほどの賑わいはない。
しかし、つくばから一時間ちょいで新宿にも渋谷にも行けるのだ。住民からすると、下手に都市化が進み、街が混とんとするぐらいなら必要なときにだけ、都心に出向けばよいと考えてしまう。すぐ目の前に歌舞伎町があるぐらいならこのまま静かな街のほうがいいと思う人が大半だろう。逆説的に考えると、都会の喧騒が嫌だからこそ、つくばに住んでいる人も多いと思われる。
これが観光のランキングや平均所得のランキングを発表するのであれば分かる。
だが、これは埼玉県などもそうだが、東京のベッドタウンになっている県と観光で成り立っているような京都や沖縄を比べる必要性がまったく見出されない。白米と大トロを比べる意味だ。余計なお世話だが、埼玉県が進むべき方向性は観光の充実でなく、ベッドタウン埼玉として、交通インフラや生活インフラの拡充など、いかに県民が暮らしやすくなることの方が重要だろう。これから秩父の山の中を切り開いて、埼玉県を一大リゾート地にしますと言われたところで、住民はそんなことじゃねぇよ、京浜東北線の朝夕の大混雑をなんとかしろ、首都高速外環の渋滞をなんとかしろ、こちらの方がよっぽど切実だと思う。
都道府県魅力度ランキングなんてものは目の前に牛肉、マグロ、リンゴ、人参、白米、蕎麦、うどん、ラーメン、とんかつ、唐揚げ、セロリ、シイタケ、サンマ、ケーキ、饅頭など、様々な食品を並べられてこのなかで一番美味しいものはなんでしょうかと決めるような話じゃないか。
松坂牛、神戸牛、大田原牛、飛騨牛、米沢牛・・・、もっとも美味しい牛肉を選びましょうというのであれば分かるが、リンゴと牛肉のどちらが美味いかって、この問題を出す奴の脳みその構造が正直理解出来ない。リンゴと牛肉との魅力度を比較検討する意味があるのか。まさに魅力度ランキングがこれ。
毎年毎年、不毛な議論が繰り返される。
そのうえで、茨城県が最下位であっても俺はまったく構わない。今回は佐賀に最下位を譲ったが、来年定位置の最下位に戻ってしまったとしても県民からするとなにも困らない。転勤や学業などで茨城県に住んでいらっしゃる方の中には茨城が嫌で嫌で仕方がないという人もおられることでしょう。それはお気の毒にとしかいいようがない、でも、殆どの県民が100%とは言わずとも概ね満足して茨城に住んでいると思われる。その理由は東京に住みたきゃ割りと簡単に移住が出来る場所にもかかわらず、移住もせず、287万人もの方が粛々と茨城県で暮らしていることを見ても明らかだと思う。
だいたい、沖縄がいつも魅力度ランキング上位に表示されているが、そんなに魅力的なら投票した奴はさっさと沖縄に引っ越せばいいじゃないか。
沖縄は低賃金でもあるし、米軍の基地問題もある、それは嫌だというんだろう。語るに落ちるじゃないか。魅力度ランキング1位の常連北海道もそう、東京にはかなりの多くの北海道出身者がいるが、北海道に魅力を感じているなら、わざわざ内地に来る必要性がないだろう。
魅力があって沖縄や北海道に憧れているのであれば今すぐ引っ越せって話だよ。沖縄旅行サイコー、北海道旅行サイコーというのであればまだ分かるが、生活とは全く次元の違うレジャーの話だろう。単純に見るべき観光地が多いことを競うのであればそれは魅力度ランキングではなく、単なる観光地ランキングだって。日本の場合、観光地が著しく偏っているため、都道府県単位で比べることの意味ってあるのか。京都を見習って他の都道府県も頑張りましょうと言われても、いったいどう頑張るんだよって話だろうが。