覆面の北枕

その昔、借金の切り取りを任されて行った時の話。

まあ、何度も行っている家だからさ、別に「おい、払えよ、この野郎」という感じじゃなくってね、ど～も～、こんちわ～、毎度お馴染みの三河屋で～すってな気楽な感じでさ、感覚的にはガスや新聞の集金に近い感じやね。

それでさ、ある日行ったら玄関脇にあった犬小屋が無くなってんのよ。

「あれ、おばちゃん、ワンちゃんどぉしたの？」とバアさん（債務者のおふくろ）に尋ねたら殺されたっていうじゃん。

まさか、わざわざ人んちの犬殺す奴なんかいねぇだろうと思い、老衰か病気で死んだんじゃねぇのかよと思ったのだがよくよく聞いてみると殺されたのはどうやら本当らしかった。

さっきまで元気だった犬が突如痙攣しだし、あわてて動物病院に連れていったのだが、時すでに遅し、大量にドッグフードを吐き、ぽっくり死んでしまったのだというのだ。

不審に思った獣医が念のため、吐き出したドッグフードを分析したら殺虫剤にも使用する、劇薬のホウ酸が混ざっており、明らかにこれは人為的に混入させられたものだという。

そもそもこの家では残飯専門でドッグフードを与えていなかった。

おそらく、痺れを切らした他の借金取りが無言の圧力でやったんだろうな。

とにかく、ここんちの息子というのがだらしなくてってさ、もらった金は全部酒か女に遣ってしまう。

それこそもう、サラ金、信販会社はもとより、ヤミ金、ヤクザまであっちからもこっちからもつまみまくっていたのだ。

とばっちりを食らった犬からすりゃとんだ災難だわな。

そんなことを婆ちゃんとやりとりしていると息子が帰ってきた。

挨拶よりも先に、「○○○ちゃん（ドラ息子）、犬殺されちゃったんだって？可哀相なことしたなぁ」って、俺は声を掛けたさ。

そしたら、当の本人、「犬がいなくなって清々したよ、ぐへへへっ」と笑っていやがった。

俺はなんとも思わなかったが、熱烈な愛犬家がいたらぶち切れる話だと思う。

まあなんでもいい。

今月の集金が出来りゃなんでもいい。

人んちの犬ころが死のうが生きようがまぢたく興味がない。

当時はそれぐらいの感覚ですね。


≫sakuraさん

なーんだ、Ｊさんじゃん（笑）。

ハンドルネームが変わったから分からなかったよ。

直メありがとうございます、今度は新アドの方にメールしますね。

ひたちなかに来るときがあればご飯でも食べましょう。