AIの続きね。
ここに百万円があります。これを3年後1千万にしてください。その方法は合法なものであれば何をどう選んでも自由、株式投資はもちろん、ETF、FX、バイナリーオプション、極端な話、競馬や競輪であっても構わない、とにかく3年以内に1千万円にしてくださいと指令を出す。人工知能がこの先進化すればこれも可能になるんじゃないかと思っている。
ただ、そうなると労働の定義というものが揺らぎ、貨幣という概念そのものが違ったものになってくるのではないかと思うのだ。
種銭を用意さえすれば自動的に増えていくのであれば貨幣の価値そのものが著しく下がりますよね。それはわかるよね。だって労働をしなくてもお金だけが自動的に増えていくのであれば高いものであっても無理せず買えるし、売る方は売る方で無理に安くしなくとも売れてしまうんだもん。また、資本家は労働者を雇わなくとも金を増やせるのですから企業が人を雇うということがなくなります。もし仮に雇うとしても極めて安い賃金で雇えてしまう、なぜならあぶれている労働者はそれこそそのへんにごまんといるわけであり、嫌なら無理して働いてもらわなくて結構ですの論理で給与の条件が都道府県で定めた最低賃金まで下げられてしまう。その最低賃金を求職者が求める様はまんま芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の世界。そうなると必然的に物価は著しく上がり、町にはAIを使いこなせない大量の失業者が溢れる、こちらは同じく芥川龍之介の「羅生門」の世界。
これってAIは使われていないが実際にアフリカのジンバブエなどではすでに起こっている現象だよね。
いずれ、こういう世の中になるんじゃなかろうか・・・、とは思っていません(笑)。
トヨタが車を作るのをやめて、利殖だけで資産を増やす企業になるかといったら現実的に考えてそんなことってありえないじゃん。
もちろん、銀行や証券会社、保険会社などの機関投資家が現在の金融工学をより精度の高いものにした人工知能を取り入れ、確実に儲かる投資を実践するようになるとは思いますけど、トヨタが車を造るのをやめ、国民の誰もが人工知能を用いて利殖に励むとは到底考えられないもん。もしそれが可能であるならとっくにトヨタは自動車の生産をやめてるでしょ。トランプ大統領に嫌味を言われ言われ、無理して車を造らなくともトヨタの創業者一族は向こう千年間楽に遊んでいけるぐらいの金はあるわけじゃない。でもそれをしないというのは結局のところ、トヨタに限らず、日立製作所でもナショナルでもそうですけど、一抜けして利殖だけで喰っていくということが仮に理論上可能であったとしてもやはりそこは社会通念上そんなことは許されないということで一致していると思うのです。
だからこそ、あまり個人や企業間でのことを心配する必要はないと思うのだが、本当に怖いのは中国やアメリカ、或いは中東の政府系ファンド運用国がAIを使って、自国を繁栄させようと考えたときだよね。
資本主義の最大の欠点って稲作のように種を植え、育てることによって刈り入れが出来て、携わるみんながみんな幸せになるということはありえない。幸せになる人の裏で必ず泣いている人がいる。その泣いている人というのが個人であったり、企業であったり、国であったりするわけですよ。
このへんはケインズの経済理論が詳しいのですが例えば国全体の景気がよくなるとするじゃない。でもこれって内需では公共事業が増えて儲かったと喜んでいる国民の裏で、国債を乱発した国が泣いているということでもあるし(もっとも政治家や官僚はてめぇの腹が痛むわけじゃないから泣くという概念すらないでしょうけど)、或いはよその国にツケを背負わせて貿易黒字が増えた結果であったりする。言うまでもなく日本の貿易黒字が増えるということは、まあ大概はアメリカなのですが、どこかの国の対日貿易赤字が増えているということでその対象国が泣いているということなのです。
ちなみに高校の政経の授業で習ったとは思いますが貿易黒字、貿易赤字についてはわかるよね?一応説明しておくと輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支がマイナスであれば貿易赤字、プラスなら貿易黒字。 要するに輸入額が輸出額を上回っていれば貿易赤字であるし、輸出額が輸入額を上回っていれば貿易黒字。
問題はここからなのですが自国を繁栄させるためには世界が資本主義で動いている以上、他国を泣かす必要がある。そこでAIくんの出番です。AIに命じてどこに資金を投入して、どこから資金を引き揚げれば一番自国が儲かり、相手国にダメージを与えられるかということを計算させる。ここも資本主義の欠点なのですが、だからといって相手国をくれぐれも殺してはいけない、殺してしまったら今度は自国の食い扶持がなくなってしまいますからね。相手が必死でもがき続けられるぎりぎりのところを攻める。そうやって水面下でいかに主導権を握るかの計算をAIにやらせるのです。
もちろん、喰われる側の国も当然人工知能を使っていかにしたらこの危機を乗り切られるかを計算する。まさに何でも貫く矛と絶対に何も通さない盾とのせめぎ合いであり、水面下では火薬を使わない戦争が起こっているということも十分ありうる。
先日AIを使った囲碁大会が行われましたが、あれなんか国家間の争いの縮図みたいなものでしょ。国内最強AI「DeepZenGo」と、世界最大のゲーム会社・テンセント(中国)が開発した「絶芸」のどちらが勝つかって話で、結局今回は日本が負けましたけども時代が進むにつれ、ああいったことが国家レベルでも起きやしないかと思うのです。AIの開発は望むと望まざるを問わず、結果として今後どんどん加速していきます。でもそれが人類にとって必ずしも幸せな結果を生み出すとは僕自身思っていないんだよねぇ。